TokyoBanana

ミュージシャンのレビュー

GOODSHiTS

ライナーノーツ

2020年、リスナーの音楽に対する価値観は多種多様で提供する側も非常に考えさせられる時代へと突入した

無料で需要と供給が成り立つサンクラを筆頭に手軽に音楽を持ち運べる辞書のようなサブスクまで、聴き方の選択肢も増えてきた

その中でもHipHopと言うジャンルはその流行の波に特化したカテゴリーである

そんなラップ文化も変貌を遂げつつあり、MCバトルの普及で中高生の支持も増加

そして、そのシーンとは別にラップを嗜む10代、20代も同じく日本語ラップが崩壊していた10年前に比べると明らかに目立ってきている事実もあることに、目を背けられない

そのクロスオーバーした現代のミュージックシーンで私はある１つの輝きを体感した気がする　それが今回リコメンドするTokyo BananaのGoodShitsと言うMixTapeだ

まず、Tokyo Bananaのバイオグラフィーから紹介していく必要がある

Tokyo Underground HipHop Crewと名乗る彼らはProducerであり、DJやBeatmake、勿論のことながらRapも熟すTartinoと残り2MCのTight BashとMad Jwel$ Gの3人によって構成されているHipHop Crewだ

とてもユニークで大胆なグループ名だが、それ以上に彼らの作る楽曲は刺激的だ

今作・GoodShitsではそのスパイシーな音楽的要素が濃厚に凝縮されていて、聴くものの鼓膜を覚醒させる何かがある

今回のMixTapeに収録されているVKRSZは王道のTrapチューンでありながらも個性が爆発している　BPM90弱のスローテンポのビートに少し和を感じさせるような上物が重なり、その上にMuMBLEなラップが乗っかる

ラップとしては収録曲、どれもフロウが素敵でTight Bash氏のリズム感が私的には刺さるDAWで打ち込んでいるようにも見受けられるが使用しているプラグインもかなり気になるところで、ハード面でも興味を唆られる

まるで"聴くエリミン"のようなサンウドが全身を駆け巡る破壊的一曲

また、Yellow Bitchと言うナンバーにおいて、非常に印象的なリリックに出会えた

"程よく品がなく、でも芯がある"

このラインなのだがタイトルから想像出来そうで、良い意味で裏切ってくる言葉選び

BitchなんてワードはHipHop界で手垢だらけで使い古された単語なのに、これをYellowをヒントに絶妙な解釈をしてくれている

韻の踏み方もシンプルで耳心地が良い

サウンドに関しては芸が細かく、ただのTrapでは終わらないLil Yachtyを彷彿とさせる不穏なビートが聴いてて気持ちいい

あまり、Trapに対して免疫のない私でも、すんなり聞くことが出来るのはリリックの愉快さやトラックの作り込まれた感じにあるのかもしれない　これは魅力的だ

そして、一番お気に入りなのがVong

VKRSZとYellow Bitchで心が南京錠でロックされたところにVongでトドメを刺された

まず、気になったのがまさかの下ネタで構成されたSkitが中盤差し込まれているところ

3人の雑談形式となっており、トラックを無駄遣いしていると見せかけて有効打となっている、この曲の骨組みにアッパレ

さらに、ビートはどことなくブルースでサンプリングの手法も目立ったキルソング

こんなにもラフで芸達者なソングライティングが最新HipHopに落とし込めるのは正直、悔しいのと、新しいのに懐かしくもある

Trapのみで構成されたMixTapeかと思いきやの逆転ホームランと言ったHipHopスタイル

何周してもドキドキした感覚を薄れさせない曲順と質感が堪らない

このMixTapeの総評としては音質やラップスキル、言葉選び全てがTokyo Bananaであると言うことでまとめられる

日本人であるアイデンティティがビートに音として盛り込まれており、尚且つインターナショナルなノリも感じさせてくれる

そんなBanana感とローカルさの臭いがしない都会的なリリックを面白おかしく噛み砕いているところ

この全てがうまい具合に組み合わさって生み出されたエッジのある作品　これが答えだ

吐いて捨てるような現在のアンダーグラウンドのHipHopシーンでこう言った創造物は稀有てあることは間違いない

何でもサラッと聴けてしまう今のインディーズ界隈、色々と考えせられることは多い中で、このMixTapeがどんな役割を果たしてどんなリスナーの耳に届くのか、私は今から楽しみで仕方ない

どこまでも進化が止まらないHipHopカルチャーに暗中模索している人にとってこの作品はその道標になってくれることだろう

そして、まだこの音に出会ってないヘッズがいるとするなら今作をキャッチすることに急がなくてはいけないだろう

Tokyoで燦然と輝くアンダーグラウンドをたくさん味わえました

まだ、聴いてない方は是非

著:灰色のピーターパン(Gray Peter Pan)